副業(兼業)してもいいですか?~兼業・副業の現状と課題~
「副業(兼業)してもいいですか?」と従業員の方から聞かれたことはありませんか?二つ返事で副業を認める経営者の方、何が問題はないかなと考え回答を保留する経営者の方など様々だと思います。
厚生労働省はモデル就業規則を公開しており、その中で2017年末まで兼業・副業を原則禁止と規定していましたが、2018年1月に兼業・副業を原則容認する内容に方針転換しています。
この記事では兼業・副業の現状や制度導入のメリット・留意点について
1. 兼業・副業の制度導入状況 2. 兼業・副業のメリット
3. 兼業・副業の課題・懸念 4. まとめ
の順で書いていきたいと思います。
1. 兼業・副業の制度導入状況
まず兼業・副業の現状について中小企業庁の調査結果を見てみましょう。以下の図は2014年のアンケート結果ですが、兼業・副業を推進している企業はなく、容認している企業は全体の14.7%と決して多くはありません。
2. 兼業・副業のメリット
それではなぜ兼業・副業を容認するのでしょうか。兼業・副業制度を認めている企業は以下のようなメリットを挙げています。
従業員が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
従業員の自律性・自主性を促すことができる。
優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
従業員が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
いずれも制度導入による即効性はないと思われますが、2017年度平均の有効求人倍率は1.54倍と(8年度連続で上昇し1973年度以来44年ぶり)高水準を維持している昨今、多様で優秀な人材を確保することで会社として競争力をつけられる(つけたい)と考えているようです。
3. 兼業・副業の課題・懸念
一方、兼業・副業制度を認めていない企業が大多数ですが、それがなぜかは以下の課題や懸念点から見えてきます。
自社での業務がおろそかになる
情報漏洩のリスクがある
競業・利益相反になる
副業・兼業に係る労働時間や健康管理の取扱いのルールが分かりにくい
企業で働く従業員の方は、業務に専念すること、秘密を守ること、労働時間が適切に管理されていること等が期待されますが、一つの企業で働く場合と比べて複数の企業で働く場合には上記1~4について一層気を付けなければなりません。1~3は兼業・副業を始める前の聞き取りや社内教育、就業規則で制限しつつ4の労働時間管理をしますが、兼業・副業する2社で両方とも労働契約(雇用契約=役員や個人事業主でない)の場合、労働時間管理と給与計算は複雑になります。例えば、
A社と「所定労働時間3時間」の労働契約を締結
B社と新たにA社と同一の日に「所定労働時間3時間」の労働契約を締結
A社で5時間労働して、その後B社で4時間労働
といった場合、B社が1時間分の割増賃金(1.25倍)を支払う必要があり、もしB社が1時間分の割増賃金を支払わないと違法になってしまいます。つまり他社分の労働契約の内容と各日の労働時間の把握が必要ということになり、人事管理をされている方は難しさを実感していただけるのではないでしょうか。このようなリスクを避けるため兼業・副業を導入しないというのも十分理解できます。
4. まとめ
厚生労働省のモデル就業規則が変更されても企業は必ずしも同じにする必要はありません。兼業・副業制度の導入のメリットや課題を検討し、社会の流れを注視しながら、自社でのビジョンや戦略に合わせて制度を導入・構築していくことをお薦めいたします。
兼業・副業の制度導入に関する就業規則の作成や変更、給与計算についてサポートが必要でしたらお問い合わせください。
社会保険労務士 加藤秀幸
厚生労働省
モデル就業規則
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
副業・兼業の促進に関するガイドライン
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